つくば市立みどりの学園義務教育学校
世界のあしたが見える学校
全国津々浦々、公立・私立にかかわらず、それぞれの小学校がオリジナリティー溢れた授業を実施している。分けても今回ご紹介する「みどりの学園義務教育学校」は、平成30年開校という新しい学校ながら、小中一貫校の特色を生かし、9年間の学びの中で子どもの発達段階に応じた系統的なカリキュラムで成果を上げている。開校1 年目にして最先端のICT(Informationand Communication Technology)教育の実施校として、日本教育工学協会(JAET)が主催する「学校情報化先進校」を受賞。その先端的な取り組みと成果について話を伺った。
<校長 毛利靖>
生徒と教師がともに取り組むICT教育
特別ではない、普通の小学校
本校はSDGs 推進地域であるつくば市に位置し、英語やICT教育、21世紀型スキル教育に力を入れています。特別な学校というわけではなく、文部科学省による新学習要領に沿って、主体的・対話的で深い学びの実現をやっているだけです。公立学校なので、先生たちはICTなどそうした方法の専門的な訓練を受けているわけではなく、意欲的な子供たちと一緒に、少しずつICTなどを使えるようになっています。
みどりの学園は子供たちがモチベーションを高く持ち、向上できる環境でありたいと考えています。授業は自らの興味を発見して、いろいろなことに広げていくきっかけにしてもらいたい。そして、子供たちが今行っている学習を
自慢する姿、それ自体を価値あるものとして捉えています。先生はもちろん、児童たちもそう感じてくれているので、授業や発表などさまざまな場面で、どの子もどんどん話をしてくれます。プレゼンテーションも2〜3分以上行うことができます。
パソコンなどのICT機器については、一人一台ありますが、パソコンが使えるようになればいいというものではありません。パソコンでもアナログでも、両方のミックスでも良いと思います。自分で知りたいことをYouTub
eで見ることもあれば、本で調べることもあるかもしれない。勉強の仕方は三者三様ですから、自分の能力やスキル、必要性に応じて、いろいろなものを使い分ける力を身につけていって欲しいと考えています。
1年生から9年生までいるということ
義務教育学校という、1年生から9年生が一緒に学ぶ学校は国の制度として始まっていて、日本全国に増えてきています。この制度によって、9年間のカリキュラムを組むことができるようになり、中学生になったときに、「これ小学校で習ったよね」といったムダをなくすことができます。
また、中学生と小学生に縦のつながりができることも良いことだと考えています。中学生が小学生の面倒をみることで、小学生にとって中学生は憧れや目標になりますし、中学生も小学生に優しくなり、責任感も芽生えます。そういったことに義務教育学校のメリットはあると思いますし、子供たちがお互いにお互いを思いやれる子になって欲しいですね。
未来は楽しい
小学生のみなさんには自分のやりたいことを貫き通して、個性を大切にして欲しいですね。ひとりひとり、やりたいことは別々です。人のやっていることをあんまり気にしていると自分のやりたいことが出来なくなってしまいます。だから、周りに認められなくても自分を信じて突き詰めて、その力を伸ばしていって欲しいです。
努力は自分の生き方につながっていきます。何より、未来って、楽しいのですよ。私はみんなの未来に期待でいっぱいです。失敗しても大丈夫だし、失敗した方がいいことだってたくさんあると思います。希望をもって、自分を大事に成長していってください。
また、保護者の方々には、未来ある子供たちをみんなで一緒に育てましょう、と伝えたいですね。学校は教員だけでは成り立ちません。子供もおうちの方も、みんなで作っていくものです。ぜひ学校を応援していただきたいですし、
子供たちを大切に、よりよい環境を作っていけたらと思います。
本校の取り組みにふれて――
技術を生かしてのびのびと
みどりの学園義
務教育学校は、9年間の学びの連続性を生かし、発達段階に応じて系統的に、ICT教育、プログラミング教育、STEAM教育、英語教育、アクティブ・ラーニングなどを展開している。
開校当時の本校は、恵まれたICT環境ではなかったようだが、教員らの熱心な取り組みによってICT教育が実践されている。2030年の世界を自ら創り上げていくために必要な21世紀型スキル・社会力を身に着けるため、つくば市で提案されている「つくば7Cスタディ」を活用し、「協働力、言語力、思考・判断力、プログラミング的思考、知識・理解力、創造力、市民性」を大事に考えている。
学校に一歩足を踏み入れると、まず児童による、英語でのみどりの学園義務教育学校の紹介プレゼンテーションで迎え入れられた。校長先生によると、つい数分前にプレゼンテーションをお願いしたらしい。この学校では学校紹介のプレゼンテーションを誰でもでき、お客さんが来ると交代で行うそうだ。それに驚いていると、小学3年生の男の子や小学5年生の女の子が、自分で作ったゲームを発表してくれた。先生に教わるわけでもなく、自分でそれぞれ本やネットで調べながら作ったと言う。
教室に行くと、一人一台のパソコンを持つ児童たち。
机は前を向いていることよりも向き合っているクラスが多く、グループワークを行っている。そして、SCRATCH というプログラミングソフトを使ってドローンやロボホンを動かしたり、MINECRAFT を使ったりしてSDGs の問題解決を試みる授業や、プログラミングソフトを使って音階を自分でつくる音楽の授業など、「SDGs× プログラミング× 教育」が実際に実現されていた。
授業に取り組む生徒に話を聞くと、「プログラミングソフトを使うのは、慣れるまで難しかったけれど、少しずつできるようになって楽しい」といった声から、「パワーポイントを使ったり、ロボットに喋らせたり、自分で資料を作ったり、どれが一番いいのかを考えて発表して、相手に伝わったときが嬉しい」という生徒までさまざまだったが、みんなが楽しんで授業に取り組んでいることが伝わってきた。このように素晴らしい環境で育った子供たちが、間違いなく、これからの世界を担っていくのだろう。
この記事へのコメントはありません。