渋谷区立富谷小学校

「よく考える子」
「やさしい子」
「たくましい子」

東京都渋谷区にある公立小学校。今年で創立91年目を迎える伝統校である。近くには東京都立代々木公園、明治神宮、国立代々木競技場などがあり、都心にありながら緑が多く、学習環境に恵まれている。2019年、学校情報化優良校にも認定され、情報技術を積極的に取り入れ、教育に活用している。

<校長 博多正勝>
当たり前のことを着実に、530名を育てていきます

学校の先生になろうと思ったきっかけは?
私は小学生の頃、吃音があり、人前で話すことが苦手でした。自信がなく、周りの人と上手くコミュニケーションが取れないと悩んでいたとき、担任の先生が熱心に面倒を見てくれました。「この人のようになりたい」と思い、教職を志しました。高校生の頃までは社会科が好きだったことから中学校の教員を希望していましたが、当時の担任に「小学校が教育の基本だ」と教えられ、大阪から東京の大学に進み、平成5年、東京都の小学校教員としての生活がスタートしました。
初めは先輩方の背中を見てひたすらに学ぶ日々でした。また、専門書や講座で勉強しないと間に合いません。身銭
を切ってたくさん勉強しました。自分の空っぽの引き出しに知識をとにかく詰め込み、その後整理することを繰り返していました。授業が上手く行かない日々もありましたが、児童と真剣に向き合い続けた結果、徐々に自信が付きました。40歳の時、上司に勧められて教育委員会の指導主事となり、副校長を経て、縁あって昨年4月から本校の校長になりました。校長の仕事は迅速に判断し、その責任を取らなければなりません。全校児童を育てていくことから、職員や保護者、地域の方々との連携がとても大切です。やりがいがあり、楽しい仕事です。

富谷小学校の特徴を教えてください
主体的な学びを進めていくために「なぜ?何のために?」を考えられる子供に育てていきたいです。具体的には自分の考えをどう文にし、どう話し、どう伝えるか考え、発信できるようにしたい。インプットだけでなく、アウトプッ
トを増やすことを意識しています。また、コミュニケーションの基礎である挨拶を大切にしています。当たり前のこ
とを着実に行える力を身に付けさせていきたいです。
渋谷区では4年前からタブレット学習を始めており、子供たちはタブレットを文房具の一つとして活用しています。また、渋谷区では「シブヤ科」の学習が始まりました。より渋谷を好きになってもらうために渋谷の歴史や街を学んでいます。私たち学校は街を元気にする役割もあります。富谷小学校の近くに「春の小川」の歌のもとになった川があります。そのことを子供たちに伝え、守っていく学習も行っています。

子供たちや保護者の方へメッセージを
子供たちに向けては先ほど話した「なぜ?何のために?」を常に考え、発信してほしいです。保護者の方々には「子育てお疲れ様です」と伝えたいです。私も一人の父親として子育ての楽しさとともに難しさも痛感しています。子育てに王道はないと思っています。保護者の皆様、たくさん話をして一緒に子育てを頑張りましょう。

早稲田大学3年 原田紘志/津田塾大学4年 松本麗奈/津田塾大学2年 佐藤心咲/文教大学3年 早乙女太一

<佐藤綾花先生>
自立した学びを子供たちに子供たちには自立した学び手になれるようになってほしいなと思っています。自立した学び手とは、目的やゴール、課題に向かって自分でプロセスや方法を考えて、自分たち自身で解決できるようになる
ということです。しかし、最初からこのようなことはできませんので、授業の中で学んでいます。例えば、国語の授
業では、音楽の時間に鑑賞した複数の曲の中から、自分のおすすめの曲の魅力を紹介文に書いてみんなに伝えるとい
う学習活動をしました。子供たちはどうすれば効率良く、お互いのおすすめの曲を聴きながら、推薦文を読むことが
できるだろうかと考え、聴く側が回りやすいように、商店街のように机を並べました。
ちょっとしたことですが、その時の目的を意識し、自然と友達と話し合いながら自分たち自身で考え、解決した行動
は素晴らしいと思います。このようにして将来必ず必要となる、自分たちで問題解決する・計画するという力を育て、自立した学び手になれるように教育しています。
全学年に配布しているパソコンは、子供たちにとって文房具の一つです。パソコンを使いたい場面や使い方も子供たち自身が選択できるようにしています。ただ、どのような場面でどのように使えるのかはこちらから紹介したり、みんなで話し合ったりしながら考える場面を作っています。子供たちの選択肢が増え、より楽しく学ぶことができるのがすごくよいと思います。

日常の中から課題を探し出せるように
日頃からいろいろなことに興味を持ち、日常生活の中にある課題を見つけ出していってほしい。そしてそれを解決するために日々の学校生活で学び、最終的には自分の力で解決できるようになってほしい。これは大人になってからも必要とされる力ですが、それ以前に人生をより楽しく豊かにするものだと思っています。ですから子供たちにはたくさん経験して、学んで、生活していってもらいたいです。

<田村圭佑先生>
すべての学びが繋がるように
私は、学校行事やクラブ活動、学級会等の学級活動といった「特別活動」の主任をしています。新型コロナウイルスの流行に伴い、学校ではさまざまな活動に制限がかかりました。子供たちの安全を最優先に考えると、予定していた行事を中止せざるを得なかったり、内容を大きく変更したりしなければ実施できないことばかりです。そんな中でも、子供たちにとって楽しく、力が付く活動にするにはどうすればいいのか、試行錯誤しながら取り組んでいます。
授業や学級運営では、学習内容や学級のルールなどをこちらから一方的に与えるのではなく、子供同士が話し合ったり、関わり合ったりしていくことで新しい発見をしたり、課題を解決したり、授業や子供の社会の中での出来事を通して学んでほしいと思っています。
本校では、オリンピック・パラリンピック教育に力を入れていて、特にパラリンピックを中心に取り上げ、「障害者理解」を育んでいます。学年ごとにテーマを決めた調べ学習やパラアスリートによる講演、実際にパラリンピックの競技を体験するなどを行っています。また、そこで学んだことや調べたことをパワーポイントにまとめてプレゼンをするなどの活動をしています。学校で思考力や発想力、人間関係形成力を身に付け、それらを地域や社会で活用できることが大切だと考えています。そのために、授業がその授業単体で終わるのではなく、教科をこえて、学校と社会が繋がるようにと考えています。

一人では生きていけないからこそ大切に
子供たちと接するときは、「子供」ではなく「ひとりの人間」だと思うようにしていて、「あなたのことを大切にしていますよ」「あなたはすごい」というメッセージを伝えられるように意識しています。人間は一人では生きていけません。児童のみなさんには相手も自分も大切にし、相手の気持ちも考えられるような大人になってほしいです。

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