GIGAスクール構想が
教育のあり方を変えていく!

「1人1台端末」のICT環境が整備、利活用に向けて推進されるGIGAスクール構想。その背景には、日本の教育現場でのICT利活用の遅れや児童生徒の情報活用能力に課題があった。次世代のデジタル教育を推進するためにはどうすればいいのか。GIGAスクール元年における文部科学省の取り組みを伺った。

<文部科学省 初等中等教育局 情報教育・外国語教育課 情報教育振興室長 水間 玲>

PISA2018で明らかになったこと
サイバー空間とフィジカルな空間が高度に融合する現代社会において、日本の児童生徒のICT(Information and Communication Technology〈情報通信技術〉)活用能力が低いという現状があります。2018年に実施されたOECD/PISA「生徒の学習到達度調査」では、科学的リテラシー、数学的リテラシーが世界トップレベルだったことに対し、読解力は前回の調査から有意に低下しました。
その原因としては、読解力のテスト問題の約7割がオンライン上の多様な形式を用いた課題文であったため、普段、日本の生徒がコンピュータ画面上で長文を読むことに慣れていないことなどの要因が複合的に影響した可能性があります。
実際に2018年のICT活用調査でも、学校において他の生徒と共同作業するためにコンピュータを使う頻度は、日本がOECD各国の中でも最下位レベルでした。一方、日本の生徒がICTそのものを活用する機会がないのかと言えば、そうでもなく、SNSやゲームなど、娯楽としてのICTの活用状況は世界トップクラスでした。
また、2019年度に文部科学省が実施した小学生の調査では、86・5パーセントが「授業でもっとコンピュータなどのICTを活用したい」と回答しています。つまり、教育現場は、このようなICTを活用することへの子どもたちの関心にも応えていく必要があります。
こういった状況の中で、2020年度から順次実施されている新学習指導要領では、情報活用能力を「学習の基盤となる資質・能力」と位置づけ、学校のICT環境整備やICTを活用した学習活動の充実を明記した上で、小学校におけるプログラミング教育の必修化等も明記するとともに、教育現場における「1人1台端末」等のICT環境を整備する〝GIGAスクール構想〞を推進しているわけです。

情報活用能力の育成
情報活用能力とは「情報及び情報手段を主体的に選択し、活用していくための個人の基礎的な力」です。具体的にはICTの基本的な操作や情報を収集する「情報活用の実践力」や、プログラミングなどの「情報の科学的な理解」、情報モラルの理解に努める「情報社会に参画する態度」の3つが挙げられます。
今回、小学校で必修化されたプログラミングは、コンピュータに指示を出して、特定の目的を達成するための手順・仕組みを理解することなどを通して、物事を論理的に考える能力を育成することが目的です。
たとえば、算数の授業では、正三角形をコンパスではなく、コンピュータに命令を出しながら書いてみる。理科であれば、センサーのついたキットを用いて電気を効率よく使うための制御の仕組みをプログラミングを通じて体験するといったことが挙げられます。

端末を文房具のように使う
学校でのICT活用については、端末を導入すること自体が目的ではなく、えんぴつ、消しゴムといった文房具と同様の道具として、しっかりとフル活用していただきたいと思っています。
たとえば、動画や音声の機能を活用した児童生徒の興味の喚起や理解の促進、情報の収集・分析・まとめ・表現などによる探求的な学習の推進など、ICTの特性を活かして、さまざまなシーンで活用いただきたいです。
新しい取り組みも始まったばかりで試行錯誤の連続だと思いますが、全国のどの先生も児童生徒もGIGAスクール構想から取り残されないように皆様とともに推進していきたいと思います。
その際、ICTの利活用に当たっては、技術的な側面を含め、専門家などによる支援も重要です。文部科学省では、ICT活用に関する日常的な教師の支援等を行う「ICT支援員」や、1人1台端末環境の整備をはじめとする初期対応等を行う「GIGAスクールサポーター」の配置、「ICT活用教育アドバイザー」による専門的な助言などの取組を行っていますので、ぜひご活用いただきたいです。

〝「GIGA StuDX」〞について
1人1台端末を活用した学びは、多くの学校にとって初めての取組となることから、その支援を行うために、文部科学省では「GギガIGA SスタディーエックスtuDX推進チーム」を設置しました。学校でのICT活用が積極的に行われるよう、「SスタディーエックスtuDXSスタイルtyle」というWEBサイトで優れた活用事例を掲載したり、メールマガジンで情報を発信したりしながら、学校現場の支援を行っています。なお、共有される活用事例は高度なものだけでなく、机の上に教科書と端末をどのように配置するかといった事例や、正しい姿勢の提案といった事例もあり、どのように使い始めるのかといった基本的なことから着実に進めていくことが大切だと考えています。

国際基督教大学4年 鈴木菜桜/東洋大学2年 濱穂乃香

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